小生からの依頼を受けて、バタフライカヤックスの高嶋さんはなぜこの企画に乗ることにしたのか。開発までの経緯を綴ってもらっていました。本誌では簡単にしか紹介できなかったので、ここに全文記載します!
バタフライカヤックス

 映画「この世界の片隅に」の帆掛け舟のイメージで広島の川をさかのぼる旅用に「セイルを作りませんか?」という話をいただいてから、まずその映画を一度観ておかなくてはと思い調べたところ、運よく地元姫路でも上映しており、早速観に行くことにしました。その映画は斬新な表現方法でとても感動的な話だったで、開発の時間は少ししかないがなんとか協力できたらと、開発を引き受けることにしました。

 昔に一度セイリングカヤックをしたことがあったのですが、ほぼ0からの開発でまずイメージづくり、帆掛け船がどんな形か調べることから始めました。
 基本追い風を受けて走る四角い帆で、帆自体は横棒1本とマスト1本で支える簡単なものでした。あとはカヤックにどうマストを立てるか・・・3人旅の企画なので他社製のフォールディングカヤックにも取り付けられるという条件も考える必要がありました。フォールディングカヤックのデッキは布製で柔らかく直接固定することはできなく、現地で穴をあけることも当然出来ない。最初は中央に1本マストを立てるベースプレートをDリングで固定と考えていたのですが、そのマストを支えるロープでだんだん複雑になり、もっと単純にできないかというのと最も強いフレームはガンネルなので、ガンネルを支点に2本マストに変更し三角形で左右方向を支えることにしました。ベースの最低条件を考えたところガンネルフレームに丸パイプが当たれば十分なのではないか?という結論になり、なにかいいパイプはないかとあたりを見渡すとちょうどオリジナル製品のシステムカートセットが目に入りました。

 「!!」
 これならパイプの曲げ具合を変更すれば前後方向もロープで支える必要がなくなり、ロープは一切使わずにフレームのみをデッキに固定するだけでマストが立ちそうだと早速パイプベンダーで曲げを90度にして試作しました。
 昔タスマニアで作ったセイルは強風で転覆しそうになったので、セイルの面積は少し小さめにして、早速かなり強風の日に海に漕ぎ出しました。テスト中の幅の狭いクルーソー500だったのですが全く転覆する気がせず、後日弱い風では進みが悪く、最終的には面積を1.5倍にしました。帆掛け船は追い風のみという制限はあるのですが構造上セイルは横向きにはならないのでカヤックを転覆させる方向には力が働きにくいという利点も発見しました。

映画のワンシーンみたいなこともあったんだよ

 一応、映画のイメージは作れたかなあ・・・と思いつつ、まだまだツーリングの手段として使うには改良が必要でこれから少しづつ改良していきたいと思います。

 後日、姫路城のお堀で運行する現在日本でわずか数名しかいないという船大工の棟梁、奥村武志さん製作の和船に帆をつけて瀬戸内海でテストをした様子の記事を見つけ、今回作った帆にそっくり!と感激。帆掛け船が帆掛けカヤックに姿を変え昔のように瀬戸内海に漂う日が来たら面白いだろうなあと想像しました。