著者・撮影:西沢あつし
単行本: 167ページ
出版社: 山と溪谷社
ISBN-10: 4635242072
ISBN-13: 978-4635242073
発売日: 2004/4/1
(絶版)

 実は単独の著書としては、この本が最初。カヤックではなくてSLの本だった。
 なぜかというと、山と渓谷社の当時「Outdoor」という雑誌の編集担当S氏から、「西沢さんもそろそろ単行本出してみない?企画持ってきてよ」と言われたので、3つほど企画を持っていった。その内2つがカヤックで一つがSLだったのだけど、当時ちょうどシーカヤックの本を準備中ということで、SLで行こうとなったのがその理由(そのシーカヤック本、小生には考えられない事情があったようで遅れに遅れていたけど)。

 鉄道写真?というのは、小生が小学校の時にブルートレインブームというのがあり、鉄道写真が写真趣味の第一歩であったのだ。ブームというのはすごいもので、中学で同じ趣味の友人ができて、さらに本格的な暗室まである上に機材も揃っている写真部があり(モノクロ専用だったけど)、さらに上級生がいわゆる幽霊部員だったこともあって、暗室も印画紙も使い放題。当時フィルムもパトローネさえあれば、中身を入れ替えればかなり安く写真を撮ることができた。デジカメほどではなかったけど、中学生にとっては実に恵まれた環境だったかな。ただ根本的にお金が無いから、できる範囲は狭かったけどね。

 だから当時の自分の夢の集大成として、鉄道写真の本を出版するということで企画に入れたら、これを通してくれた。後で聞いたのだけど、出版会議ではそれこそ山と渓谷社から鉄道写真集を出しているような大家に頼まないのか聞かれたという。担当編集S氏はそこは頑張ってくれたそうだ。
また企画もただの写真集ではなく、ガイド的要素を入れようということになったが、その理由は後述。

 SL列車が主役なので、撮影・取材は運転される土日休日がメインとなる。当時カヌー・カヤックの取材も土日がメインだったから大変だ。さらに運転日は決まっているから、まずはそれを中心にスケジュリングしなければならない。そうなると一年中の土日が埋まってしまう。そこで幼稚園に入ったばかりの長男も使い(電車・乗り物も大好きだったしね)、「親子で楽しむ」として、冬の湿原号のようにハードな撮影になることが予想される列車以外は、家族で行くことも多かった。
 こう書くとやっかまれそうだが、基本的に交通費は基本自前である。とにかく、昔の自分にオトシマエをつけたくて、「これは俺が撮った写真でできた本だぞ」と言えるものを作りたい一心だった。
 SLって黒い車体に時に白く、時にグレーの煙と被写体、特に露出が凄まじく難しい。さらに当時はフィルムでありリバーサルであり、せいぜい秒5コマであり、今よりも精度の低いフォーカス。そして一日一往復というチャンスを確実にものにしなければいけない、というプレッシャーで撮影を続け、結局ほぼ3年強をかけて
 特に印象に残っているのは、新津車両区内で「ばんえつ物語号」を牽引するC57のキャブ(運転台)に同乗させてもらい、SLの運転方法の撮影をさせてもらったことかな。

 この本についても、色々な思い出があるし、別の仕事にも繋がっていったので、機会はあれば加筆していきたい。また使わなかった画像もたくさんあるので、ギャラリーも作りたいな。

 実はこの後に「親子で楽しむ面白列車+撮影ガイド」という本を提案したんだけど、そのままになってしまっている。どこかで出しませんか。