「富野由悠季の世界」展に行ってきた
車の話しになったついで(?)に、こちらの展示会のことなど。
この企画がプレスされた時、即座に絶対行こうと思っていたのだけど、東京に来ない(わざと?)というので、最も近い会場である静岡県立美術館に行ってきた。「カヌーワールド」の次の企画もこれからという感じで、ようやくちょっと時間が出来たのだ。
実は、20年ほど前(!)わずかな期間だが、静岡は清水に住んでいたこともあったのだが、この美術館には行かなかったのだが、こんな環境の良い美術館と公園があったのね、とちょっと残念な気もした。
まあなんて言っても「ガンダム」の洗礼を受けた世代としては、今風に言えば、氏は「神」的存在なのかな。なので僕には「由悠季」ではなく、「喜幸」の方がしっくりくる。
展示の方は期待通り!なかなかに面白いものだった。
手書きの絵コンテ、企画書など表に出て来ない資料が特に見たかったのだが、とにかく企画書やラフスケッチが凄い。結果的にボツになった企画や設定も、いやこれそのまま出てもいいんじゃない?というくらいに考え抜かれたものなのだ。
ガンダムもザビ家もダイクン家も家族構成がしっかり描かれ(ダイクン家はもっと兄弟いたのね)、サスロは企画段階で暗殺されたことになっていた。面白いのは、キャラクターデザインが自分のオーダーしたものと違ったものが出てきてしまったので、逆にそれを元に設定をし直したというものもあるという。それはやはり安彦氏の絵の力なんだろうなあ。
それにしても、最近の展示会は随所に撮影OKの展示があったりするのだが、ここは入場してから退場まで、展示物は一切撮影が出来ない。撮影させるのは、SNSでの拡散=宣伝も兼ねてと思われるけど、そんな必要はないという企画者の自信の現れなのかな。なので、とにかく一生懸命見ましたね。映像は見ようと思えば後で見られるので、とにかく企画や設定を見ていたら、目が疲れて少々頭が痛くなってしまったよ(苦笑)。
それにしても、今のアニメーション監督、演出家も含めて、オリジナル企画をここまで考えられる人っているのだろうか。製作に繋がるのは、この膨大な資料のごく一部なので、それこそ膨大な考え→アウトプットが必要となり。それは世界観だけでなく、スポンサーやテレビ局に「この番組を作りたい、お金を出したい」と思わせることが必要で、ただ「こんな物語を作りたい」では出来ない所業だ。
これは僕が新しい雑誌「カヌーワールド」を作るときも、単にカヌー・カヤックが好きだから、では出来ないことを考えて(もちろんそれが好きということが下敷きにはなるけどね)提案、実行してきたことに通じる(って、この方と比べるべくもないけどw)。
まあ、それはさておき、最近のアニメーションは原作モノばかり、製作委員会製になる理由がわからないでもないが、このままではクリエイティブの先細りにならないかというか、なっているか。なんかもう同じようなものばかりが延々と続いているもんね。
ただ、富野氏の資料も、まだガンダム前の無名時代の時の提案資料と、超有名になってからの提案資料では、その量は(質はなんとも言えないけど)全く異なっているのも面白い。もっとも展示の関係で目に見えてないところは変わらないのかもしれないけど。
自分としては、80年代が終わると本当にアニメを見なくなってしまったので、ガンダムⅡくらいかな、から後の作品は、残念ながらあまり「自分ゴト化」して見ることは出来なかった。
アニメーション関連の展示会も、最近とみに多くなってきたけど(東京では今は「MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」ってやってる。観に行ったけど)、演出と言ってもどうしてもビジュアル中心になってしまう。自分的にはどれももっと音楽的な演出を掘り下げて欲しいんだよね。掘り下げるというか、音楽どころかSE自体、「音」に関する演出論は見たことがない。
ガンダムのモビルスーツ起動音でもビームライフルの音でも、それは唯一無二で他は真似しようもないわけで、どうやってイメージを作って、オーダーして、上がったものに対してどのように修正していくのかのプロセスも見たいのだ。
音楽については、特にIDEONかな。完全に当時のTVのレベルを超えていた。ヤマトもそうだったけど、より宗教的な音色になっていると思う。すぎやまこういちの作曲スタイルはこれで出来たように思うし、羽田健太郎のピアノもまた凄まじい。
次の展示会からはぜひ、「音」の演出論についてもよろしくなのです。
ふと思ったけど、逆に紙に書いた(アナログの)スケッチなり企画だから残っていたのかも。パソコンだと消したり壊れたり、fmtやverの違いで逆に出てくる可能性が低くなるのではないだろうか。
そうそう、どうみてもマニアではない、フツーの人の観覧者も多かったのもまた印象的でした。
頭が痛くなるくらい詰め込んでしまった。
#富野由悠季の世界 #ガンダム