ノーマルであれば、車高が2mを超えるT3Westy。よじ登るように入り込む運転席は、運転台とも言えるようなシロモノであるが、意外と座面は肉厚で、僕のように1m近い(超えた?)座高だと、前方視界を取ろうと思うと、背骨を曲げてフロントガラスを覗き込むようにしないと十分な視界をとることができない。サンバイザーなんか目隠しそのものである。そしてT3のシートバックは垂直に近ので、気がつくとえらく姿勢が悪くなっている。
まあそんなでも、とにかく長距離を走ってしまうので、なんとかしなくちゃなあ、と切実に思っていた。そうしたら運転席のスィベル(回転金具)を取りはずせば座面は低くなるよ、と誰かが言った。
T3はフロントシート2脚の下にスィベルが入っており、ぐるりと後ろに回すことができる(運転席はシンクの関係で100度ほどだが)。買う前は、これこそキャンパー!と使える装備だろうと期待していたのだが、これが意外と使わないのである。
T4以降のフロントエンジンタイプでは、室内に第2列に値する席を入れるスペースはないので、運転席が回転することはユーティリティにつながることになるのだろうが、もともと長大な室内スペースを持つT3、前席のすぐ後ろにジャンプシートを配置している僕のT3では、運転席の回転はさしてメリットがない。
スイベルを外せば座面は5cm下がると(某ショップの御仁が)いうので挑戦することにした。
フロントシートを一番前にして、レールの横にある三角形のレバーを倒すと、レールからするりとシートは抜ける。ボディとスィベルとを止めている3箇所のボルトを緩めて、スィベルを取りはずすと下からには見たようなレールが入っている。
よし、これでシートを入れるだけだ。よいしょっと持ち上げて、レールの入り口に噛ませ・・・ようとするのだが、はまらない。
「あれ?!入らないぞ??」何度やっても同じ。
「おかしい!」
よくよくレール部分を見比べてみると、なんとスィベルを固定する台座がスポット溶接されているのである。溶接がレールの片側の穴を塞いでしまっているので、シート側のフックが入らないのであった。
これを見たその某御仁は「初めて知った」としきりに感心していたが(?)、溶接はサンダーで削れば取ることができるんじゃないでしょうか、という。
この作業は徒労という言葉をそのまま体現したようなものか。
ちなみに、大阪に行ったときにファントムの岡田メカにこれを言ってみると、「そうですよ、溶接されてますよ」とあっさり言われてしまった。
僕のようなロングツアラーではシートのことも真剣に考えた方がいいのだが、何分先立つものがない。できるならば、レカロシートを低く取り付けたいけれど、いつの日になることやら。