ロングの場合は、高速道路の駐車場でP泊する。コストも時間も有効に使えるのだが、ETCの夜間割引が入ってから、同じことを考える人がとっても多くなったようだ。SAによっては止めるところがなかったりする(苦笑)。
その日は唐突にやってきた。
家から車で1時間ほど離れた実家に向かう。
コンプレッサーとオルタネーターが危ない状況なので、なるべく負荷をかけないようにもっさり運転をさらにもっさりと運転した。
東京では梅雨に入ったばかりというのに夏日まであと一歩という状態になり、気温は急上昇。途中、オーバーヒートをしてボンネットをあけている車を何台か見た。不思議なことに国産車、しかもちょい旧めというものが多かった。日本車だって整備しなければおかしくなってしまうのは同じだ。
「いやな光景だなあ・・・」
水温計に視線を落とすと、針はLEDランプがある中央あたりにしっかりとあり、後方からのエンジン音にもにごりはない。
しかし悲劇は待っていたのだ。
実家の前に止めたヴァナゴンに乗り込み、キーを差し込む。
父「おまえの車はいったいいくら金がかかるんだ?」
僕「いや、もうオーバーホールしたからね、問題ないよ」(ヤバイ補機のことはもちろん言わない)
その後お決まりの、かみさんや子供はいい迷惑じゃないの?という母の文句が入り、僕の「この車には他の車にはできないことがある!」というセリフで会話は終了する。
キーをひねり、スターターを回した。
キュルルルル…スコン
あ、あれ??
いつもならスターター一発ですぐにブルンと回ったエンジンが、セルは回れどエンジンに火が入らないのである。
再度イグニッションを入れても同じ。
3回、4回・・・。むなしくスターターが回るだけだ。
・・・気まずい沈黙。
エンジンがかからないことは明白になったので、バッテリーへのダメージを考えてすぐに別の対応を考える。と言っても、プロに聞くだけなのですが(笑)。
何か言いたげな両親を横目に、岡田メカに連絡をしてみるが繋がらない。
うーん、困った。
路駐なのでこのままにして帰るわけにはいかないし、時計を見たら夕食時か…。迷ったがDrに電話をかけた。
俺「あ、今電話大丈夫ですか?すみませーん、エンジンがかからなくなってしまったのですが…」
Drからも岡田メカに連絡を入れてみるというが、やはりつながらなかったようだ。とりあえず、原因特定をしてみて、もし直せるようならやってみようということになった。
エンジンに火が入らない場合、原因は大別して2つという。
ひとつは燃料系。エンジンまでガソリンが行っていなければ、動かないのは当然だ。
もうひとつは点火系。火花が飛ばなければガソリンがシリンダーに入っても爆発させられず、エネルギーは生まれない。
セルモーターは回るので、電気はあることはわかった。
まずは燃料系を確認していみよう。
「燃料ポンプは交換してる?」とDr。
「うーん、僕の知る限りでは一度も交換していませんね」と僕。
燃料ポンプも消耗品で定期的な交換が必要だとのこと。寿命の可能性がある。イグニッションをONの位置にすると、フューエルポンプが作動する、ブーンという音がするというのだ。位置はちょうど車体の真ん中あたりになる。
早速キーをOFF→ONにしてみたが音は聞こえてこなかった。周りもウルサイこともあって、下に潜り込んで聞いてみたがよくわからない。
携帯の電池が少なくなってきたので別の原因も探ってみることにする。
Dr「そしたらリレーを見てみよう。エンジンカバーを開けて」
リアゲートを開けて、積んである荷物を降ろし、エンジンカバーを外してエンジンをむき出しにする。両親も心配そうに見ている。が、静観していてくれるのはありがたい。
Dr「エンジンルームの左側についている黒いボックスがあるから開けてみて」
僕にとっては初めて見る文字通りのブラックボックスである。
僕「開けてみました」
中には2つの四角いリレーが入っている。
Drによると、それで燃料ポンプをコントロールしているので、しっかりはまっているかの確認と、スイッチが入る感じはあるかの確認をするように言われた。
指でグイグイ押してみたが、キチンと入っているようだ。
うーむ、打つ手なしか?
Dr「あとは点火系かなあ」
これはローダー呼ぶしかないかなあ。と半ばあきらめかけたのだが、最後にエンジンをかけてみようと思い、キーをひねった。
キュルルルル・・・ブロンバルルルル・・・・
愛機T3ウェスティは、いつもの低くくぐもった音を閑静な住宅街に響かせた。
かかった!!なぜだ?!
とにかくエンジンがかかったので、Drにお礼を言い電話を閉じた。ここでエンジンをOFFにしたら、もう2度とかからないかもしれない。
降ろした荷物を急いで放り込むと、一目散に家に向かって走っていった。