この連休、またまた三陸海岸は大船渡まで走ってきた。
しかし相変わらず予報の当たらないこと当たらないこと。週間予報はもちろんのこと、2日前の予報さえアテにならない。ここのところ遠距離になると夜討ち朝駆け当たり前。しかし体力の方はどうも落ちているようで、特に視力がT3ヴァナゴンの暗いライトにはついていけなくなってきた。このあたりも改善の必要がありそうだ…。

さてそれではまたまたT3苦悶記、じゃなかった格闘記に戻ることにしよう。

この車を買ったとき、あったのはメインキーだけでスペアキーはついていなかった。
メインキーだけだと流石に不安なので、スペアキーを作るべくいろいろな店に当たったのだが、ほとんど対応するキーがない状態であった。そんな中でようやくコピーが出来たその店は、なんと次の週に倒産してしまっていた。

スペアももう一本あった方がいいかと思い始めて幾歳月、新たな店を探すのが億劫でなかなか作れなかったのだが、東急ハンズ渋谷店で作成したという人がいたので、渋谷での買い物ついでに行ってみることにした。
暑い中坂を登っていってみると、「うーん、このタイプのキーは(コピーは)できないですねえ」となんとも簡単に断られてしまった。なんでもブランクキーは、もう入ってきていないとのこと。

なんとなくスペアキーを作らなきゃなあ、と思い続けていたある日、吉祥寺にある「カヌーライフ」誌の編集部に寄った帰り、五日市街道沿いにある小さな合鍵屋さんが目に入った。
まさか、こんなところにブランクキーは無いよなあ。と思いつつ、ガラガラと引き戸を開けた。

「すみません、この車の合鍵を作りたいんですけど」
とワーゲンのエンブレムの入った元のキーを渡す。
「珍しい鍵ですねえ」と言われる。車種を聞かれたので、1989年式のT3ヴァナゴンだと答えた。そして同時期に正規輸入されていたのはカラベルと呼ばれていたので、それに合うものであれば、また合う可能性がありますとも付け加えた。

何種類ものカタログ、パンフレットと付け合わせをしていたが、合うものがないらしい。「うーん、ワーゲンであればこれに合うはずなんですが。違いますねえ」と店主。そう、すぐ見つかれば苦労はないのだ。
すると店の奥からデッドストックらしいものをジャラジャラと出してきた。「ここに無ければ残念ながらありません」と言ってワーゲンの印があるホルダーを取り出すと、その中から一本を取り出し、僕が渡したキーと比べる。若干厚みが違うようだがこれなら合いそうだとのこと。

「2,500円ですがよろしいですか?」
なんと街中の鍵屋さんにブランクキーがあった。意外!!
ちなみに国産車なら500円。5倍の値段だけど致し方なし。
ブランクキーを捜すよりもはるかに短い時間で削り出すと、「開かなかったら修正しますので、また持ってきてください」とのこと。

家に帰ると早速ドアのキーに差し込む。・・・無事開いた。
次にイグニッションキーの穴に差し込む。回す。エンジンもかかった。
最後にエンジンを止めて外に出て、フューエルリッドの鍵穴にキーを差し込む。・・・開かない。

キーが回らないのだ。
ヴァナゴンのキーはドアとイグニッションスイッチの他に、フューエルリッドも兼用している。うーむ、これではガソリンを入れられないな。落胆。しかしなぜフューエルリッドだけ開けられないのか?

これは現物も持って行って作ってもらうしかないな、というわけで後日車で行ってみるが、臨時休業で休み。うーむ。

またしばらくして、ようやく店の前まで行くチャンスが出来た。忘れられていると困るので、領収書も持参する。店の前に止めて店に入ると、苦労した客は覚えているのか、用件もすぐに察したようだ。
「あ、ワーゲンのお客さんですか。開きませんでしたか?」
「これだけ開けられないのです」
と、取り外したフューエルリッドを渡す。
すると鍵穴にCRC-556を吹き付ける店主。これで開くこともままあると言う。鍵を差し込んでは抜いて556を吹く作業を何回か続ける。
何回かやると、キーはぐるりと回ってロックが外れた。んー、なるほど。こういうこともあるのね。

店から出ようとすると「バナゴンってどんな車なんですか?」と店主。外に止めてありますよと言うと、店の外に出ると店主もついてきた。
「これがそうですか。ふーむ、日本では売っていないのですか?」と店主。
「並行輸入か個人で輸入するしかないみたいですよ」と僕。
しきりに感心された。そう、日本ではどうやら僕が思っているよりも珍しいかも知れない。

ところが後日、せっかく作ったこのスペアキーを無くしてしまったのです。場所は多分、家の中。大掃除でもしないと出てきそうにありません(苦笑)。
再びコピーをしなくちゃいけないかと思うと、ちょっとユーウツです。キーに刻印してある文字を見てみると、SILKA ITALYとあります。裏は品番なのかV013Pと書いてあるので、これを元に探してみるしかないのかなあ…。


当然のごとく一筋縄ではいかないT3ヴァナゴンのスペアキー。苦労されている方も多いようで、今回はいくつかのResをいただきました。

鉄道写真のオーソリティーであるフォトグラファーの広田泉さんは、「鍵の110番」で作ってもらったとのこと。
「何でもつくれます」と胸を張って言った店員は、T3のキーを見た次の瞬間、固まっていたとか(笑)。
ようやく削ってもらって出来たものの、やはりフューエルリッドが開かなかったそうです。気になるお値段は、同じく1つ2,500円だったとのこと。
ブランクキーはアウディ用だったということです。

大阪在住のIさんからは、「Duoでも買えますよ」ということで、品番をいただきました。
251・837・219・A だそうです。ブランクキーそのものの値段は1,500円ほどだったそうですが、加工はしてくれなかったそうです。
このブランクキーを鍵屋さんに持ち込んでも、削ってくれない場合もあったり、保証しないと言われたり、価格が鍵屋さんのものを使った場合と変わらなかったりするそうですので、ちょっと覚悟がいりますね。
で、このことを知る前に社外品でつくった鍵はドアしか開けることが出来なかったそうです。うーむ、さらに厳しい。

大磯在住のAさんは、やはりVWディーラーでブランクキーを購入し、鍵屋さんに「開かなくてもいいから!」とお願いして加工してもらったそうです。

そして最後に、ファントムガレージの岡田メカから「一本だけなら在庫あるよ」というメールをいただきました。
ハイ買います。確保お願いします。

しかし、スペアキー一本つくるのに大騒ぎになってしまう車って・・・楽しい(笑)。